今回のテーマは、「逆計算」です。予定価格が公表されている場合に最低制限価格や調査基準価格を算出する手段として用いられており、簡単に算出できると思われがちです。
ただ、思ったような結果が得られないケースも多くあり、どのような点に気をつけるのか、積算担当者二人の会話形式で振り返ります。
この間、金抜き設計書(※)をもとに積算したら、事前に公表されている予定価格に合わなかったんだよ。時間もないので、予定価格から逆計算した結果をもとに入札価格を算出して、内訳書を作ろうと思うんだ。
※入札公告時に配布される参考資料の1つで「積算書」と呼ぶこともある。発注者が予定価格を算出するために積算した設計書が「金額抜き」の状態で配布されるもの。
構わないけど、そもそも「逆計算」についてはどこまで知っている? 仕組みを知らず、ただざっくりと計算しているだけだと、思わぬところで足をすくわれるかもしれないよ。
たしかに、直接工事費を調整して予定価格を出している、という程度しか知らないし、間接工事費の細かい計算方法についてはさらに分かっていない……。
逆計算では予定価格を参考にして、直接工事費をはじめとした予定価格を構成している各金額を算出するんだ。また、そこに含まれている共通仮設費や現場管理費は、発注者が公表している経費条件(工種区分ごとの割合など)をもとに算出する。そして、算出した各内訳をもとに最低制限価格や調査基準価格を導き出すというプロセスなんだ。
予定価格が公表されていること(事前公表)が前提だし、経費条件が明示されていない場合もあるので、地域や発注者によっては逆計算をする機会は少ないかもしれないね。ただし、設計書で採用されている工法や工種、材料等が特殊で見積を取るものが多い場合など、通常積算の精度が安定しないときには、逆計算の方が高い精度で最低制限価格などを算出できることもあるので、算出の仕方を覚えていて損はない。
なるほど。でも逆計算をすると、複数の候補が出ることがあるよね? もし条件が分かっているなら、解答は一つになりそうものだけれど、どうしてだろう。
丸め(切り捨てなど)の条件があるからだね。例えば、10,000,000円の予定価格に対して10,000円の切り捨て条件になっている場合は、10,000,000円~10,009,999円の範囲が可能性として当てはまる。もし最低制限価格が「1,000円単位」の場合、この約10,000円の差が、予定価格から最低制限価格や調査基準価格を算出する中でさまざまな条件が影響し、結果として複数の候補が存在することがあるんだ。
ちなみに、積算ソフトでの逆計算の仕組みとしては、直接工事費を1円ずつ値を変えて予定価格と合うように繰り返し計算しているみたいだよ。
そうだったんだ。だったら、条件が多くなればなるほど、複雑になって最終的な予想の候補が多くなるってことだね。
そのとおり。だからこそ、経費条件などは可能な限り確定しておく必要があって、そこに誤りがあると、最終的な最低制限価格や調査基準価格が大きく違ってくる。面倒くさがらず、しっかりと条件を設定しておこう。
ほかに気をつけるポイントってある?
いくつかある。逆計算をする上では、以下のような点を抑えておかないと、正確な最低制限価格等の算出は難しいね。
こうして見てみると、本当に色々な条件が絡み合っているんだね。もっと簡単にできるものかと思っていた。
そう、だからこそ積算ソフトを使うと、そうした手間を大きく減らせるんだ。積算ソフトの中には、発注者ごとの細かい条件があらかじめパッケージ化されており、最低限の設定で正確な金額が算出可能なものもある。調べながら一つずつ条件を設定していく必要がない分、かなりの時間短縮になるよ。しかも「逆計算」機能があらかじめ用意されているから、手順通りに進めるだけで予想が導き出せたりもする。
なるほどね。今までなんとなく画面の指示通りに進めていただけだったから、仕組みが分かって理解が深まったよ。
逆計算で出た結果は、あくまで予測のシミュレーション結果にすぎず、最終的にどの結果を採用するかは、人の判断が必要になる。そして、さらに正確な値を求める際には、やはり積み上げが必要になる。それでも逆計算は、決まった全体の予定価格から直接工事費を算出するので、積み上げる際にも答え合わせがしやすくなるメリットがあるんだ。
計算の流れや計算に影響するポイントを掴んでおくと、入札後に結果がずれた原因が特定しやすいし、積算検証するうえでも時短に繋がると思うよ。
せめて、くじ引きの対象にはなりたいし、もっと落札できるように頑張ってみるよ!
◇ まとめ ◇
いかがでしたか?今後、予定価格は事後公表が増えていくことが予想されますが、逆計算は積算の精度を高める上で知っていて損はないノウハウですので、ぜひ活用してみてください。
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