『Gaia Cloud』には、積算の自動化を目指した「全自動積算機能」が備わっています。しかし、最終的に精度の高い積算を実現するには「人の力」が不可欠です。AI(人工知能)を活用しても、100%の解析は難しいとされています。
現在の競争入札では、100個の積算項目のうち1項目のミスも許容されず、競争から外れてしまうことがあります。最終的には人が行うため、ミスが発生する可能性は避けられません。
そこで今回は、積算の初心者から上級者までが陥りがちな「よくある積算ミス」について、積算担当者二人の会話形式で振り返ります。
積算業務って、一人で作業すると間違いに気づけないことがあるよね。この前も、積算に自信のあった入札物件の開札があったんだけど、フタを開けてびっくり!金額が大幅に違っていたんだ (:_;)
いくら積算ソフトを使っているとはいえ、ソフトに指示を出すのは人間だからね。設計書の中に「何か引っ掛けがあるんじゃないか?」「見落としはないか?」といった注意を払いながら、部分的だけでなく全体的な視野をもって取り組まなければいけないんだ。
これには、一定の経験値が必要になる。その経験や知識を、できるだけ早く身につける手助けをすることも「積算ソフト」の大事な役割だと言えるね。
今回はどうやら、「経費条件」が違っていたみたいなんだ。この役所の設計書には詳しい経費条件が載っていなかったから、去年の似たような物件を参考にシミュレーションしたんだよね。
「経費条件の設定ミス」は、初心者にはありがちなミスの1つ。直接工事費をいかに正確に積算できたとしても、この経費条件を間違えれば大幅な違算につながる。
経費にはまず「年度」という考え方があって、「●年度の経費を採用しているか」を認識しておくのが基本。その上で、経費条件の基礎となる「工種条件」を把握する。ちなみに、「施工地域区分」や「週休二日補正」などの各条件の違いによって経費率が異なってくることは知ってるよね?
このような大事な情報が設計書や特記仕様書等のどこにも記載されていない場合は、必ず「質疑事項」を出して発注者に確認するべきなんだ。
なるほど。質疑を出して確認することが重要なんだね。その習慣はなかったなー。忙しくていつの間にか質疑期間が過ぎていることが多いので気をつけるよ。
設計書で不明瞭なところがあれば必ず質疑を出す癖をつけたいね。忙しいのは分かるけど、想定や予想が外れると確実に落札から遠ざかるからね。
起こりやすい積算ミスってほかにどのようなものがあるかな?
積算基準や単価の改定にも注意したいね。先ほどは「●年度の経費を採用している」と話したけど、積算基準や単価にも同じことが言えて、積算経験者なら最初に目がいくところ。
発注者ごとに、採用する積算基準の適用年度や材料等の単価の適用月は違っていて、多様なパターンがあるんだ。これらは基本的に積算ソフトで自動的に設定されて、ミスが起こりづらい部分だけど、「イレギュラー」も考えられる。
たとえば、「積算基準の適用年度や採用単価月は前年度、かつ労務単価のみ新年度」を採用するような場合だ。このように「単価採用月の違い」ひとつでも、大きく積算結果が異なることになる。
なるほど。まずはその設計が「通常」なのか「イレギュラー」なのかを見分ける経験や知識も必要だね。ほかにも、特記仕様書や参考資料、場合によっては図面も見て「イレギュラー」がないか確認しなければいけないね。
その通り。設計書以外の関連書類にも、積算するうえで重要なヒントが記載されていることが多いからね。必ず目を通したほうがいい。と言っても、関係する部分はおおよそ定形化されていて、そこさえ見逃さなければ時間はかからない。
ところで、先ほどの経費の話にも関連するんだけど、「直接工事費の一部が経費計算に影響する」ことがあるのは知っているよね?
それは知っている!「処分費」や「スクラップ」の単価などのことだね。これらは経費の対象にならないことがあるから、その採用単価の違いによって経費率や工事価格が変わってくる、ということだよね?
そうだね。残土やアスファルト殻の「処分費」は、民間等のプラント施設への「捨て賃」だから、工事費として全ての経費が計上されるわけではない。一般的な土木工事では、「直接工事費(+準備費内の処分費)の3%以内」だけ経費を乗せても良い、というルールになっている。
「スクラップ」が直接工事費に計上されている場合、「スクラップの単価にはマイナス金額を入れて経費の対象から外す」という考えが一般的。でも、「水道工事」の積算ではこの考えが当てはまらなかったり、スクラップの単価を「処分費」扱いで計算する自治体があったりするんだ。
ほかにも、水道工事で採用される「管材費」や、工場で製作されて現場で組立・据え付けされるものを「桁等購入費」や「鋼橋門扉等工場原価」として扱う場合は、三大経費(共通仮設費・現場管理費・一般管理費)の一部しか対象としない。これらは設計書等で判別できない場合もあるため、「質疑」を出すほうが賢明だろうね。
発注者ごとに考え方が違うので、ついていくのが大変だ。現場を詳しく知らないと難しく感じて、「できない」と諦めてしまう人も居るだろうね。
そんなことはないよ。最初は誰もが積算初心者だ。それに、現場をよく知っていることは積算にはプラスになることが多いだろうけど、現場や積算に慣れているからこそ「思い込みによるミス」をしてしまう場合もある。
たしかに間違いに気づけないときは、「自分は合っている」と思い込んでしまっていることが多いような気がする。
たとえば、特定の発注者の積算に慣れてきたときに、「この積算工種(歩掛り)で採用されている材料単価は毎回同じ規格だから今回もそうだろう」と思い込んで誤った規格を選択してしまった、という失敗を経験した人は少なくないと思うよ。
ほかにも、入札後の結果のズレを設計書で見返すと、名称が普段と微妙に異なっていたり、再生材だと思い込んでいたアスファルト合材が実はバージン材だったり、といったことが原因で単価が大幅に違っていた、なんてことも。でも、1度失敗すると注意深く見るようになって、次の案件からは同じ失敗をしなくなる。
今の土木工事は「施工パッケージ工種」が多いから、工種(歩掛り)の選択自体は分かりやすくてミスが起こりにくい。それでも、たとえば「採用するべき材料単価」が常に同じとは限らないし、施工パッケージが適用できず、発注者が案件個別で見積り等を取って採用する「オリジナル歩掛り」が使用されるケースもある。
しかも、「オリジナル歩掛り」の場合は、発注者と同じ「代価表」を作って計算する必要があるので、さらに注意するべき点が増える。応用問題のようなイメージだね。手作業が多くなればなるほどミスが起こりやすくなるから、油断をせずに気をつけよう。
「失敗は成功のもと」と、前向きにとらえることにするよ。積算上級者と言われる人でもミスをすることはある。自分も失敗を経験してまだまだこれから進化すると思えると、なんだかワクワクしてきたよ!
◇ まとめ ◇
いかがでしたか?積算は存外奥深く、まだまだこうした「アナログ」な要素が残っています。これらは、一種のノウハウと言えますが、今回はその中でも基本的な部分にフォーカスしました。また機会があれば、「よくある積算ミス」についてさらに深堀りしたいと思います!
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